隣で寝息をたてる彼が、ひどく愛しい。

夜、全ての事柄を終えると彼は、私よりも先に眠りに落ちる。
そう、それは"落ちる"という表現がとてもぴったりで、私は少し淋しい気持ちを抱えながら、そんな彼を見てくすり、と笑う。
それは言ってみれば習慣で、今更不機嫌になったり大切にし過ぎたりすることなく、私の中に心地良く、
その時、
として染み渡る。

なぜ、こんなにも愛しいのだろう。

彼にはいつも女の影が付き纏って、不安になることもあるのに。
そんなことは関係なく、今、ここにこうして彼の隣に寝ているのは私なのだ。
彼の寝息に耳をすませながら、その横顔を眺めているのは私なのだ。
それだけで、充分過ぎる程幸せじゃないか。

私は彼の鼻筋を指でなぞった。
綺麗な曲線が私の指の腹にぴたりと収まる。
次に、唇をなぞった。調度良い弾力が指にくすぐったい。

なぜ、こんなにも愛しいのだろう。


「愛してるわ。」


私は彼の耳元でそっと囁いた。

どうか神様、彼をどこにもやらないで。
私の側に居させて下さい。

そして、まるで母親から大好きな玩具を取り上げられないよう必死で守る子供の様に、彼の首筋にしがみついた。

なぜだか涙が、止まらない。


なぜ、こんなにも愛しているのだろう。



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あとがき
久しぶり文章。尻切れトンボ。

感想・叱咤お待ちしてます。
070520筆 花