アイ。
彼は言った。
「逢いたくなったらいつでも呼んでくれ。文字通り、飛んで行くから」
私は笑って、少しだけ頷いた。
疑うことは一つもないだろうに、彼はどこか謎めいていて、私の知らないことが沢山あるように思われた。
普段彼は仲間といる。
気の合う友人たちと派手に遊び、常に皆の中心にいた。
ふと、私と目が合うと、彼はニヤリと意地悪く笑った。
「ああ…!君って人はどうしていつもそう、可愛いんだい!」
二人きりの談話室で、彼は私を強く抱きしめる。
私は困ったようにはにかんで、彼の背中に軽く手を回した。
彼の言葉はとても軽くて、決して嘘ではないのだろうけど、どこか私を不安にさせた。
何年も同じ空間を共有してきたはずなのに、実は、中身は何もなかったのかも知れない。
大好きだよ、と彼が囁く度に、私は少しだけ哀しくなった。
大切なものほど、失った時の痛みが大きいのを知っていたから。
「ねぇ、ジェームズ」
私は言った。
「逢いたくなったら、私の方から逢いに行ってもいい?」
彼は言葉を詰まらせて、少しだけ哀しそうに、微笑んだ。
私の中の哀しみが、一気に押し寄せてきた。
それは抑えることが出来ずに、私の瞳から次々と溢れ出す。
初めてだった。
彼と共に居てこんなにも明確に哀しくなったのは。
こんなにも不明確に泣きたくなったのは。
そして、
私は気付いたのだ。
彼を、心から愛していることに。
もう、手離せないことに。
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あとがき
読みにくくてすみません・・・。
・・・!しまった!名前変換がない!!
感想・叱咤お待ちしております。
06.10.19筆 花
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