私にだって少しくらいチャンスがあるかも。
なんて。
どうしてそんなこと思えただろう。
ああ、なんて愚かなんでしょう!
Who is the fool?
「いい加減、懲りないわね。貴方も」
私は、いやらしく口角を上げ満足気に笑っているジェームズに向かって、わざとらしく溜息を吐いた。
「何のことだい」
ジェームズは私のことなど見ずに言う。彼の視線の先には足早に談話室を後にする赤毛の少女。
ジェームズはつい今しがた、何度目になるか既に分からなくなったデートの誘いをその少女に断られた。
毎回毎回はっきりと、明確に発音させられる「No!」の言葉に、ジェームズは怯まない。
「マゾなんじゃないの」
私は呆れて呟いた。
「失敬な」
少女の姿が談話室から完全に消えてから、ようやく彼は私の方へ振り向いた。
「僕だって落ち込むときくらいあるよ」
「へぇ」
私はいかにも興味なさそうに返事をした。
本当は心臓が高鳴るのを必死で隠しながら、ジェームズと目が合わないように慌てて視線を逸らす。
「そろそろ諦めた方がいいのかな、とか」
ジェームズは盛大に溜息を吐き、ソファに深く腰掛けた。
「思わないでもない」
「え?」
私は思わず声を上げた。彼はそんな私に一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに話を続けた。
「だってそうだろう、普通は。こんなにも明白に断られているのに、どうして諦めずにいられようか」
ジェームズは目を瞑り、腕を組んだ。うーん、と軽く唸っている。彼特有の芝居がかった口調や仕草は、時折私を焦らす。わざとやっているのかと勘ぐってしまうほどだ。
「諦め・・・る、の?」
待ちきれなくて私は聞いた。淡い期待を込めて。
だって、貴方はあんなにも彼女に嫌がられているのよ。
貴方がそんなことを言ったら、私にだってチャンスが巡ってくると思うでしょう?
けれども彼は、
「いや、」
と言った。
「難題であればあるほど熱くなれるだろう?」
そうだった。
ジェームズはそういう人だった。
私は顔が熱くなるのを感じた。彼の不敵な笑顔を前にして、私の頭がガンガンと鳴り響く。
ああ、嫌だ。
私だってジェームズと同類だ。
「ジェームズは、リリーのどこが好きなの」
溜息を吐きながら私が聞くと、ジェームズは一瞬目を見開いた。そして満面の笑みで、
「愚問だよ」
とはっきり言った。
ああ、嫌だ。
なんて素敵な笑顔でしょう。
でもそうね。私が同じことを聞かれても、同じように答えたでしょう。
だから私は、
「じゃあ、私はどこが好き?」
と聞いてやった。
ジェームズは一回、ゆっくりと瞬きをして、やっぱり、
「愚問だよ」
と微笑んだ。
ああ、なんて。
愚かなんでしょう!
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あとがき
短い上に名前変換なくてごめんなさい・・・!うわぁ;;
凄い駄文ですね;;;言葉が出ません;;うわぁあん!
感想・叱咤お待ちしております。
'06.05.10筆 花